めづらしき 人に見せむと 黄葉を 手折りぞ我が来し 雨の降らくに
万葉集 橘奈良麻呂

ナナカマド/時代籠

天 敵 を 威 嚇 す る 声
反 撃 す る 爪
退 散 す る 脚 を 持 た な い 彼 ら に は
猛 毒 と 言 う 懐 剣 が 授 け ら れ た
山鳥兜/トタン

槿 朝顔 月見草
今日に咲いて今日に散る一日花(いちにちばな)を生けると
居酒屋などで突きだしに出る、一口サイズのお豆腐を思い出す。
ひと口ふた口で食べきって無くなるさわやかさ、淡さ、物足りなさ。
なんでも少し足りないくらいの方がいいのだろうと思う。

明け方の川原で摘んだ月見草。持ち帰った花は日が昇りきる頃に萎み、夕刻にはまた新しい蕾をひろげた。
夜の開花も、花の黄色も、そこから漂う甘い匂いも、すべて生き延びるための創造。
そんな野生の苦心や懸命さを思えば、虫一匹いない部屋の中で咲いているのは甲斐が無さそうに見えて、
残りの花は蛾を誘えるよう、ベランダに出しておいた。
メマツヨイグサ、イトススキ

「また夏が来た」と溜息ついていたのは若さ
近頃は「また」が付かなくなっている
光る雲
歩道の照り返し
白抜きのSALEの文字
交差点の影法師
またと無い夏
白花松本仙翁 羽団扇楓

器/繭掬
花/ササユリ、ホタルブクロ、ナデシコ、イワガラミ
叢に埋もれていた Good Design
張り裂けたボールのチューブ

花/キツネノボタン・ヘビイチゴ
山遊びの帰り、駅に戻る道に迷っていると、「アカショウビンが鳴いてるね」と、大きな声で傍らのイヌに話しかけているお婆さんがいた。
道を教えて貰い、お婆さんの片手に握られたノビルに目を止めて、食べ方などを聞いていたら、夕餉のために摘んだだろうに、どうしてもと、そのノビルを持たせてくれた。
別れ際、お婆さんは童女のような顔をして「また来てね」と言った。
歩きながらいつもみたいに考えた。
今のお婆さんは、さっき息を切らして登ってお参りした山の神社の御遣わしだったのかもしれない。
気持ちよく過ごせた山の一日のお礼に投げ入れた50円玉のお賽銭。
神様はお返しまでしてくれて義理堅い、と可笑しくなった。
でも、あの神社に寄って半時を過ごさなければ、お婆さんはひと休みを終えて行き遇うことは無かっただろうから、やはり神社が寄こしたお婆さん。

花/フジ
ある日、何かがすっかり目減りしていることを感じると無性に自然が恋しくなる。
まだ一面枯色の山の道を想像しながら電車を乗りついで二時間、終点駅で降りて歩き出すと、
そこは思いの外、豊かな色で充ちている。
深々とした苔の緑、杉落ち葉の茶色、冬越しの羊歯の鶯色、新芽をたたえた枝先の臙脂色。
そうした真実の色は判じられることなく素通しで眼に射しこんでくる。
落葉は土を肥やし、倒木は着地した種が根をおろす褥となり、無関係という論理の無い世界を眺めているうちに
思うことも考えることもなくなり、一瞬、自分もその中の一片になっている。

朽ち木 苔 菌類
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